外務省: 世界の医療事情 アメリカ合衆国(ワシントンDC周辺)
2012年3月
1.国名・都市名
アメリカ合衆国 東部(ワシントンD.C.、ヴァージニア及びメリーランド州)(国際電話国番号1)
2.公館の住所・電話番号
3.医務官駐在公館
4.衛生・医療事情一般
(1)はじめに
首都ワシントンD.C.及びその近郊の緯度は、ほぼ日本の東北地方の仙台に一致し、冬の寒さは東京よりも厳しく、厳寒期にはポトマック川が一面氷結します。時には降雪のために道路状況が悪くなり、官庁・学校等、公共機関が休業になることもあります。一方、夏は高温多湿です。
(2)衛生事情
ワシントンD.C.およびその近辺は緑が多く、空気も新鮮でほとんど大気汚染はありません。しかし、最近、世界で最も水質基準の厳しいアメリカであっても水道水の汚染が問題となっています。2008年には、抗生物質、抗てんかん薬、ホルモン剤などが水道水から検出され、アメリカ全土で4100万人がその被害を被っていると報じられました。特に、都市部では排水に服用した薬や様々な化学物質が含まれ、現行の水質基準では、薬や化学物質で規制されていないものがあるため、微量であっても長期間摂取することで健康被害につながる可能性があります。
また、時にレストラン等で肝炎や食中毒が発生することがありますので、生もの(特に貝類)や生水には注意して下さい。最近米国では、食品汚染の問題が生じています。2006年に生ホウレンソウによるO-157感染、2007年にピーナッツバターによるサルモネラ感染、2008年にはトマトによるサルモネラ感染等が発生しました。
(3)医療事情
米国の医学が世界最高の水準にあることに間違いはありませんが、現行の米国の医療は様々な問題を抱えていります。
(a)高騰する医療費抑制のために様々な規制がなされ、高い水準にある米国の医学が生かされていない面もあります。また、医療訴訟が多い為、医師の賠償保険が高く、それが医療費に跳ね返り、医療費が非常に高額になっています。最近では、産科で出産を受け付けるクリニックが減少傾向にあります。
(b)健康診断、風邪等の治療、予防接種等を受けて日頃からファミリードクターと顔見知りになっておく事が大切です。当地では、医師の専門分野が細分化されているので病気によっては数人以上の医師にかかる必要がある事もあり診察、治療、支払い等個別に対応しなければなりません。1年以上経ってから医療費の請求が届くこともあるので注意が必要です。緊急時以外はファミリードクターに診てもらい、更に治療が必要な場合、専門医を紹介してもらうのが、直接専門医や総合病院へ行くよりも効率のよい方法です。専門医は完全予約制の為、急病時に受診出来る医療機関は限られます。予約無しで受診出来る救急医療施設(ER)ではいつも患者が多く、重症者が優先されるため、軽症者は数時間待たされることになります。最近 の報道では、『米国のERは危機的状態にある』とさえ言われています。
(c)医療機関受診の際は、受付で診療費の支払い能力を問われますので、現金、クレジットカードなど、支払い能力を十分証明出来る物を持参して行く必要があります。手術など医療費が高額となることがあります。海外旅行保険等に十分な補償額で加入しておく必要があります。診断されてから専門医での治療まで意外に時間がかかることもまれではありません。英語が堪能でも医学専門用語が分かりにくいなど意思疎通が十分とれない場合も多く、日本に帰国して治療を受けるほうがよい場合もあります。これは緊急性を要しない場合であり、帰国できるかどうかその判断は医師に任せるべきです。日本語通訳サービスを無料で行っている病院もありますので、あらかじめ予約しておけば日本語の通訳を受けることができます。
(d)年齢にかかわらず、急病や大怪我の場合は、911に電話をかけ助けを求めます。平均5~6分程度で救急車 が到着します。救急車が間に合わないときには、消防車の救急隊が代役を果たしています。ここでは救急医療制度がしっかりしているので、患者の状態により移送すべき適切な病院を判断してくれます。
疼痛管理のサイト
5.かかり易い病気・怪我
当地に特有な疾患は少なく、おおむね本邦同様と考えてよいといえます。あえて挙げれば、日本のいわゆる草かぶれに似た当地の蔦漆(ツタウルシ、一般にpoison ivyと呼ばれています)による接触性皮膚炎、ライム病というマダニが媒介するスピロヘータによる感染症、夏季の西ナイル・ウイルス脳炎の発生、市中型メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)感染症、湿度が低くなる冬季には、鼻・喉などの粘膜が乾燥するために、上気道炎にかかり易くなるなど注意が必要です。
(1)Poison Ivy による接触性皮膚炎
身近にある毒性の強い草で、3枚の葉が1組になって枝についています。Poison Ivyの毒性はウルシと同じUrushiolという物質で、これが原因でかぶれます。最初はこの草に触った手足や顔にうすくブツブツが出来ますが、しだいに広がり、水疱を作ります。Poison Ivyと思われる草に触れたと思われる場合には、できるだけ早く水洗いをしてください。Urushiolは水と中和するので5分以内に洗い流すことができれば、他の部位への拡散を防ぐことができます。痒みには氷で冷やしたり冷たいシャワーを浴びることで痒みを和らげることができます。全米でも毎年1000~5000万人の人たちがPoison Ivyの被害にあっているという報告もありますが、そのうち10~15%の人にUrushiolの感受性が極めて高く、重症化することがあります。顔や腕なども腫れてくることがあり、このような場合には皮膚科の受診が必要となります。
(2)ライム病
ダニに刺されて起きる病気です。ニューヨークを中心とする米国東北部に多く、ダニの吸血活動期である春から夏にかけて発生します。2004年度の調査では、東海岸に多く、メリーランド州やヴァージニア州はハイリスク地域とされていますので注意が必要です。ブッシュ大統領も2007年に感染し、話題となりました。急性期には、ダニに咬まれてから 3~32日後に紅斑、リンパ節の腫張やインフルエンザ様の症状が出てきます。その後、髄膜炎、多発性神経炎等の神経症状、不整脈等の循環器症状、関節痛、関節の腫張等の関節炎症状をきたすことがあります。治療には抗生物質が有効です。( 参考情報;American Lyme Disease Foundationのホームページ )
(3)ウエストナイル感染症
蚊に刺されて感染する病気です。年々感染者は増えていると報告されています。2007年には、全米で3630人感染者が出て、Marylandでは10人、Virginiaでは5人でした。また、米国疾病対策予防センター(CDC)は流行期には、時間を追って患者発生の様子を知らせてくれますので、下記のホームページで情報を得てください。
(4)メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)感染
MRSAとは、メチシリンなどのペニシリン系やセフェム系など複数の抗生物質が効きにくくなった黄色ブドウ球菌のことです。その中でも病院外で感染を広げる「市中型」と呼ばれるタイプが、子供の皮膚感染症の原因として米国各地で増加しています。子供以外にもスポーツ選手や集団生活している人の化膿した傷口から多く見つかっています。ほとんどは皮膚に炎症を起こす程度ですが、白血球を壊す毒素PVLを持つタイプもまれに存在します。この場合、風邪のような症状が急に肺炎に進んだり、皮膚症状も深部膿瘍になったりし、放置すると死亡する例もあるので注意が必要です。感染経路は接触で、汗をかいた皮膚にはMRSAが多くなるので、夏に感染が多くなります。まず傷口を感染から保護することが重要です。スポーツジムや� �校では、タオルやユニフォームなど肌にふれるものを他人とは共用しないこと。運動後は石鹸で手足をよく洗うこと。また、スポーツジム利用者や集団スポーツをする人、過去にMRSAに感染したことがある人は、医師の診察の際に相談しておくことをお勧めします。
肥満BMI
6.健康上心がける事
(1)当地では、リクリエーションやスポーツ施設、健康食品の入手など、健康管理の面では条件に恵まれていると言えます。公営の交通手段が少なく、自動車で移動する生活となり、また、レストランなどの外食は、一般に量、脂肪、塩分が多いので、過食と運動不足から肥満傾向になり易く、生活習慣病の原因となることがあります。その予防対策として、日常生活の中に運動を取り入れ、過食を避けるように工夫する必要があります。
(2)在留邦人はワシントンD.C.を中心に、メリーランド州やヴァージニア州にまたがる広い地域に分散して居住していますので、所属する組織を超えて邦人同士が接触する機会は、比較的限られます。ストレス解消を工夫したり、現地の人々との交流に努めるなど、精神衛生面に配慮する必要があります。
7.予防接種(現地のワクチン接種医療機関等についてはこちら(PDF))
(1)赴任者に必要な予防接種
できるだけA型肝炎ワクチン、破傷風ワクチンを接種しておかれることをお勧めします。
(2)現地の小児定期予防接種一覧
予防接種 | 初回 | 2回 | 3回 | 4回 | 5回 |
---|---|---|---|---|---|
B型肝炎 | 出生時 | 1~2ヶ月 | 6~18ヶ月 | ||
ロータウィルス | 2ヶ月 | 4ヶ月 | 6ヶ月 | ||
三種混合(DTaP) | 6週間~2ヶ月 | 4ヶ月 | 6ヶ月 | 15ヶ月~ 2才 | 4才~6才 |
インフルエンザb型菌(Hib) | 2ヶ月 | 4ヶ月 | 6ヶ月 | 1才~1才半 | |
肺炎球菌(PCV) | 2ヶ月 | 4ヶ月 | 6ヶ月 | 1才~1才半 | |
ポリオ(IVP) | 2ヶ月 | 4ヶ月 | 6~18ヶ月 | 4才~6才 | |
インフルエンザ | 6ヶ月より59ヶ月まで毎年、以降はリスクのある人に奨励。 | ||||
MMR(麻疹、流行性耳下腺炎、風疹) | 1才~1才半 | 4才~6才(2回目を18才までに終了する。) | |||
水痘(Varicella) | 1才~1才半 | 4才~6才(2回目を18才までに終了する。) | |||
A型肝炎 | 1~2歳で2回接種(6ヶ月の間隔で) |
予防接種 | 7―10歳 | 11―12歳 | 13―18歳 |
---|---|---|---|
三種混合(Tdap) | Tdap | 18才までに終了する。 | |
ヒトパピロマウィルス(HPV) | HPV (3回接種) | 18才までに終了する。 | |
髄膜炎菌(MCV4) | リスクのある小児は、2歳より | MCV4 | 18才までに終了する。 |
Tdap;ジフテリアの抗原量を減らした思春期から成人用のDPTワクチン。近年、年長児、成人の百日咳が問題になっており米国では2期の接種時にTdapを接種するよう変更されました。
hollyoaksでハンナ食欲不振
CDCに示す予防接種スケジュール(注)には、ハイリスクのお子さんや指定年齢で接種できなかった場合の接種スケジュール、各接種の間隔が記載されていますので参考にしてください。
(注) 2010 Child & Adolescent Immunization Schedules
(3)現地校に入学・入園する際にはワクチン接種証明の提出を求められます。日本と米国では、必要なワクチンの種類及び接種回数が異なるので注意が必要です。例えば、ポリオや水痘のワクチンについては、米国では日本の接種回数のほぼ2倍となっており、A型肝炎、B型肝炎、水痘、流行性耳下腺炎などのワクチンは、日本では任意ですが、米国では必要な予防接種になっています。日本の母子手帳(英語版)を持参すれば、既に済んでいる予防接種に関しては予防接種証明書に転記してもらえます。不足分のワクチンは、公立の学校に入学・入園する際には無料で接種してもらえます。また、米国入国後にツベリクリン検査を受ける必要があります。結果が陰性であれば問題はありませんが、陽性と出た場合は胸部レントゲン検査を 受けなければなりません。更に抗結核剤を1ヶ月服用するよう指導をしている学校区もあります。(BCG接種の有無は考慮されません。)
8.乳児検診
ワクチン接種の時期に合わせて小児科クリニックで健診を受けることができます。一般的には、(1)退院後1~2週間後、(2)1ヶ月後、(3)2ヶ月後、(4)4ヶ月後、(5)6ヶ月 後、(6)9ヶ月後、(7)12ヶ月後の受診を勧められます。
9.病気になった場合(医療機関等)
緊急の場合は、911に電話して救急車(有料のことが多い)を呼ぶことができ、24時間の救急対応は可能です。ただし、患者は病院を指定出来ません。直接自家用車で救急施設に行くことも出来ます。医療施設を受診する時は、緊急の場合を除き、電話による事前の予約が必要です。医薬分業なので、薬は医師から処方箋を貰い薬局で買います。また検査のため検査専門の施設に行かなければならないこともあり、日本よりは煩雑で時間が掛かります。ワシントンD.C.及び近郊には、数は少ないのですが日本語で受診出来る施設があり、以下は在留邦人が利用している医療施設です。
■日本語で受診できる医院
(1)ブロートン・奈々子医師(日本人)Dr. Nanako Broughton
所在地:1140 19th St. NW, #500,Washington, DC 20036
電話:202-728-9630
概要:内科
(2)ノブ・エイミー医師(日系3世) Dr. Amy Nobu
所在地:9409-B Old Burke Lake Rd. Burke, VA 22015
電話:703-978-4200
概要:家庭医
(3)ハンター・紀子医師(日本人)Dr. Noriko Hunter
所在地:22636 Glenn Dr.#101, Sterling, VA 20164
電話:703-444-3345
概要:内科
(4)児玉晃明医師(日本人) Dr. Teruaki Kodama
所在地:8316 Arlington Blvd., Suite 410, Fairfax, VA 22031
電話:703-573-6985
概要:外科
(5)タン・アノップ医師(タイ人) Dr. Annop Tan
所在地:2109 Dennis Ave., Silver Spring, MD 20902
電話:301-681-1508
概要:小児科
(6)中澤弘医師(日本人) Dr. Hiroshi Nakazawa
所在地:700 Geipe Rd ♯204, Baltimore, MD 21228
電話:410-744-8505
概要:元外科医、鍼治療、2007年よりアメリカ医学鍼学会の会長。
(7)上野哲弘(日本人) Mr. Tetsuhiro Ueno
所在地:46 South Glebe Rd, Suite 100, Arlington VA 22204
電話:703-521-0644
概要:鍼治療、漢方薬処方
(8)クウィーン・キョウコ(日本人) Ms. Kyoko O. Queen
所在地:1629 K Street, NW, Suite 341, Washington D.C. 20006
電話:240-354-5575 (土曜日のみ)
概要:心理療法
(9)松井俊樹 小児歯科専門医(日本人) Dr. Toshiki Matsui
所在地:Kids Dental Castle, 13890 Braddock Rd, Suite 106, Centreville, VA 20121
電話:703-830-3363
概要:小児歯科
(10)畑山貴代 歯科医師(日本人) Dr. Takayo Hatakeyama
所在地:8218 Wisconsin Ave., Suite 318, Bethesda, MD 20814
電話: 212-486-8670 (予約制)(月曜のみ)
ホームページ: http://www.drhatakeyamany.com (ホームページを参考にしてください)
概要: インプラント、一般歯科治療、歯周病治療、美容歯科
(11)岡本豊 歯科医師(日本人) Dr. Yutaka Okamoto
所在地:5230 Tuckerman Ln. Suite 105, North Bethesda, MD 20852
電話: 240-667-7705 , 888-667-8148
ホームページ: http://www.SmileWellDDS.com
概要: 歯科
■入院・手術などで利用する病院
ER・Mclean Immediate Careを除き事前に予約が必要です。日本語通訳が必要な場合、前もって予約すれば、無料で通訳サービスを受けることができる病院もあります。
(1)George Washington University Hospital
所在地:900 23rd Street, NW, Washington, D.C.20037
電話:202-715-4000(代表)
概要:街の中心部にある大学病院で政府要人なども利用しています。高度な医療に対応しています。病院内に入るには写真入りの身分証明書の呈示が必要です。
(2)Georgetown University Hospital
所在地:3800 Reservoir Road., N.W., Washington, D.C. 20007
電話:202-444-2000 (代表)
概要:高度な医療に対応しております。
(3) Washington Hospital Center
所在地:110 Irving Street, N.W., Washington, D.C. 20010
電話:202-877-7000 (代表)
概要:救急車以外に、ヘリコプター3機を有する、ワシントンを代表する大病院で、軽症から重症まで全般的に対応しております。心疾患の治療に関して、最も信頼されている病院の一つです。ERはいつも混んでいます。
(4)Children's National Medical Center
所在地:111 Michigan Ave., N.W., Washington, D.C. 20010
電話:202-476-5000 (代表)
概要:Washington Hospital Centerに隣接する小児専門の病院です。小児用のERもあります。
(5)Sibley Memorial Hospital
所在地:5255 Loughboro Road, N.W., Washington, D.C. 20016
電話:202-537-4000(代表)
概要:D.C.の中心部よりやや北西に離れた中堅の病院。中・軽症の病気・外傷に適しています。
(6)Suburban Hospital
所在地:8600 Old Georgetown Road, Bethesda, MD, 20814
電話:301-896-3100 (代表)
概要:メリーランド州Bethesda市の中堅の病院です。
(7)Inova Fairfax Hospital
所在地:3300 Gallows Road, Falls Church, VA 20042
電話:703-776-4001(代表)
概要:ヴァージニア州Falls Church市にある中堅の病院です。
(8)Mclean Immediate Care
所在地:1340 Old Chain Bridge Road, McLean, VA 22101
電話:703-893-2273(代表)
概要:プライマリーケアの診療所です。予約無しで受診出来る数少ない医療機関の一つです。軽症の病気・怪我に便利です。
(9)Johns Hopkins Hospital
所在地:600 North Wolf Street, Baltimore, MD 21287
電話:410-955-5000 (代表)
概要:メリーランド州Baltimore市にある世界のトップクラスの医療機関です
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